配当と賃金の取り合い

事業とはひたすら規模を成長させればよいものではなく、収益性が低いなら縮小するのも選択肢だ。

事業を拡大すれば利益率が増える見通しがあるなら、人件費を増やして従業員を増やしたりベターな人材に置き換える判断をする。あるいは、設備投資したりして来期以降の収益を増やそうとする。

自社で資金を運用するより、別の会社や別の投資対象に資金をまわしたほうが利回りが高そうなのであれば、出資者にカネを返す判断をする、それが配当である。

逆に、もっと出資してもらえば高い利回りのまま規模拡大できそうなら、株式を発行して追加出資を求める選択をする。つまり、増資である。

いずれにしろ、個々の従業員の賃金は、会社の業績ではなく、その従業員の市場価値で決まる別の話だということには注意したい。会社の業績向上がある従業員の成果であるならその従業員が逃げてしまわないように給料を増やすのは良いアイディアだけれども、すでに市場価値より高く評価しているのであれば、賃金を増やす必要はない。

従業員の立場で自分の収入を増やしたければ、自分の能力をブラシアップするのが一番だ。そのうえで、最良の評価をしてくれる雇用主を見つけ、うまく交渉することだ。賃金はお気持ちでするご褒美ではないのである。

実質賃金と再分配の関係

実質賃金が増える条件

政治が実質賃金を減らす要因は次の3つである。

  • 課税や社会保険料によって、稼ぎの上前をハネる。
  • 国債発行によって、通貨価値を薄めてしまう。
  • 雇用契約や営業の自由を制限して、制度に適合するためのコストを増やす。

人々がこれらのマイナス要因を上回って余計に働き、差し引きしても実質的な成果が増えた場合だけ、実質的な賃金は増える。

実質賃金を減らす簡単な方法

政府による富の再分配は、上記のコストが増やす。

とくに、経済的に成功している人に重い負担をさせる強制的再分配には、実質賃金を大きく減らす効果がある。市場にモノやサービスが供給されないなら、いくらお金を手に入れても欲しい物を買うことができない。つまり、実質賃金は下がってしまう。

いわゆる金持ちへの課税は、より多くの成果を市場に供給している者への懲罰であるから、実質賃金を大きく押し下げる効果がある。

「実質賃金を減らしてでも再分配するべきである」ということはできても、「実質賃金を増やし、しかも、再分配しろ」というのは無理筋である。