最低賃金制度という経済的徴兵制

飲食店が商品の最低価格を政府に1500円に決めてもらったら、ラーメン屋は幸せになれるだろうか?ラーメン屋にやってくる客は少なくなり、店は立ち行かなくなるかもしれない。ラーメン屋からステーキ屋に業態を変えれば済むかもしれない、だがそれには大変なコストが必要だ。捻じれた市場では高級料理店の競争率も上がってしまい、決して飲食業は楽にならない。分業のコストばかりが高くなり、消費者もまた晩御飯を自炊するしかなくなってしまうだろう。

最低賃金制度はこれとよく似た制度だ。最低賃金を1500円に増やせば、1500円以上で求人をだす会社に、多くの労働者が集まることになる。労働者は今までよりも採用されることが難しくなって、事業者の要求は高くなる。それで、労働者は幸せになるだろうか?選択の自由を失うことで、一層過酷な競争を強いられるだろう。

多くの低賃金労働者にとって、今より高い賃金水準で雇われる方法がないわけではない。危険な労働や、人のやりたがらない仕事はならば、見つけられることができる。ある人は選択するだろうし、別の人は、体力的にきつかったり、精神的につらかったりするから、選択しないだろう。嫌なら選択しないことができる、これが職業選択の自由である。

体を売りたければ体を売ればよい。だが、最低賃金制度はそれ以外の選択肢を奪う。体を売るしかないから体を売るという状況を政府が作るのが最低賃金制度の機能だ。もちろん、職業選択の自由を奪うことに他ならないから、憲法22条にも反している。

最低賃金の押し上げを要求することで得をするのは、大企業の労組の幹部や、それを背景とする政党であって、本当の弱者ではないことに注意しよう。最低賃金法は、すでに雇われている人の地位を一時的に高くするかもしれないが、多くの人にとっては、失業する低賃金労働者を踏みつけて得ることができる特権はそれほど魅力的なものではない。雇用主からみて「代わりがいくらでも見つけられる」状態が生まれるからだ。当然のように無理な要求をする事業者は増えるだろう。そしてそれを拒否しようとも、職を失えば再就労は難しいという状況が作られる。

つまり、最低賃金法は、ブラック企業を無くす法律ではなく、ブラック企業を作り出す法律なのである。

政府に雇用を規制させる最低賃金法は、政府に都合のよい経済的徴兵制ともなりうる。兵士や原発事故の後始末の作業より安く雇うことを政府が禁止すれば、低賃金労働者にそれを強制することさえできるからだ。

人手不足で倒産するアベノミクス