ナチスの社会福祉政策

「国家社会主義ドイツ労働者党」の社会福祉方策とはどういう性質のものだったのか、整理しておく。

ナチスの社会福祉政策

ナチス党の綱領に書かれた一文がナチスの社会福祉政策を象徴する。

我々は、国家がまず第一に国民の生活手段に配慮することを約束することを要求する。国家の全人口を扶養することが不可能であれば、外国籍の者(ドイツ国民でない者)は国外へ退去させられる。

ナチスが政権を獲得すると、国家社会主義公共福祉(Nationalsozialistische Volkswohlfahrt(NSV)が、1933年5月にナチスの福祉機関として設立された。NSVの本部はベルリンに置かれた。

NSVは、地方自治体やドイツ連邦州にあった国民に福祉サービスを提供していた民間の機関を国有化し、政府主導での税金を使った社会福祉を提供することになる。目指したのは、ピカピカの社会福祉政策だった。

1939年までに、8000の託児所を運営し、母親のための休暇用資金を家庭に配給、大家族向けに追加の食糧を配給、その他のさまざまな施策を行った。

1941年までに、医療保険、老齢年金、失業、障碍者手当、難聴、聾啞者、盲人のための支援、高齢者、ホームレス、アルコール依存症の救済、違法薬物や伝染病に対するプログラムを実施した。この年までに1700万人のドイツ人が国家社会主義者福祉の後援で援助を受けることになる。

NSVは3万のオフィスを構えるに至り、ソーシャルワーカー、矯正訓練、調停支援を監督する業務を行った。

このようなピカピカの社会福祉政策を国家が行うことは、素晴らしいだろうか?歴史が教えることは、まったく素晴らしくないということである。

国家の社会福祉事業は必ず失敗する。民間であれば失敗すれば資産が失われて破綻するだけだ。だが、国家の社会福祉政策は、国家の持つ強制力によって、そのツケを他者につけまわすことを前提として延命し、膨張してしまう。

国家社会主義の失敗

国家によって中央から供給する、税金を使った公共福祉制度。それが国家社会主義公共福祉だった。

国家社会主義政策に基づく社会福祉は、大幅に膨張し、ドイツの社会福祉プログラムに必要な資金は、1938年の6億640万ライヒスマルクから1941年には13億9530万ライヒスマルクに倍増した。

一旦税を用いた社会福祉が正当化されれば、その範囲はどんどん広がっていく。人々は国家に人生を依存するようになり、同時に自由を失っていった。国家の破綻が未来の喪失を意味するようになっていく。

国家が破たんすれば、年金を受け取ることができなくなり、社会保険サービスを受けることができなくなり、国家のサービスを受けることができなくなる。だから国家を維持しなければならないという倒錯した論理が主張され、国家を否定することができなくなってしまう。

人々の精神は国家の破綻を受け入れることができないほど自由を失い、そのツケを埋めようとする国家のあらゆる政策を支持するようになっていく。全体が結束し、国家の失敗を認めなくなる。これが、ファシズム(結束主義)である。

国家統制による公的社会保障は、ファシズムを導く。

公的社会保障が健康ファシズムを作り出す理由

国家社会主義の本質

国家が国民の社会福祉を統制するとき、そこには強い排外主義が求められることになる。

資源は有限であるから、公営社会保障を維持するためには、国内で社会福祉の対象とすべき者と、そうでない者を区別しなければならなくなるからだ。喫煙が禁止されたり、運動が半ば強制されたりするようになる。

そうでなければ公営社会福祉が成り立たないからという口実で、そうすることが唯一の選択肢であると宣伝されるようになる。それを人々は受け入れていく。

だが、排他的な社会福祉政策をとったとしても、結局は国家の社会福祉政策は失敗する。市場によるフィードバックを利用することができないからである。失敗すればするほど、強い結束が国家によって要求されることになる。この果てしない失敗と自由喪失の連鎖が国家社会主義の本質である。

ヒトラーが強く主張したように、国内の有限な資産の中で求められる要求を満たし続けることはできないから、対外的に領土を拡大しなければならなくなる。

経済的自由の喪失

国家の強制力に頼る社会福祉政策はダメ

国家社会主義公共福祉から我々が学ぶべきことは、国家の強制力に頼って社会福祉政策を維持しようとしてはならないということだ。そもそも、まったく民間から始まり、自発的に行われ、市場で成功と失敗を試されながら成熟するのを待たなければならないものなのである。

国家社会主義ドイツ労働者党が政権獲得すると、ヒトラーはドイツのすべての私的慈善団体の禁止を宣言した。

禁止するまでもなかったかもしれない。というのも、どんなに失敗しても政府が強制力を行使して税で補てんしてしまう事業が競合すれば、民間の事業は発達しないからだ。国が一方で税を用いた博愛の事業を実施すれば、他方で私的な博愛の事業を維持することは、自ずとできなくなる。

日本国憲法も以下のように戒めている、まったく無視されているが。

第八十九条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。


写真:Bundesarchiv, Bild 102-17313 / CC-BY-SA 3.0, 貧しい人へのクリスマス・プレゼント(1935年)

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